ヒアルロン酸豊胸は安全?しこり・感染リスクと当院の方針
監修医師プロフィール
議論の絶えない“安全な豊胸“ について。
こんにちは、院長の蘭子先生です。残暑も概ね解決し、過ごしやすい季節になってまいりました🍁
さてこの度、吸収性の架橋型ヒアルロン酸を使用した豊胸については、当院でも終了とすることに致しました。架橋型とは、ヒアルロン酸分子同士が手をつないでいるボリュームが長持ちしやすいヒアルロン酸です。
日本形成外科学会や美容外科学会では、数年前より推奨しないとされていたヒアルロン酸豊胸ですが、従来は多くのクリニックで行われていました。
“推奨しないと”された後も、私がしばらくヒアルロン酸豊胸を採用していた理由は、しこりや感染など、望ましくない結果となる一番の原因は、注入の仕方と、その量に問題があると考えていたからです。
⚠️“一塊で乳腺下にブチューッと注入する”
⚠️“片胸に150ccなど多すぎる量を入れる”
この様な注入がとってもNGです。脂肪注入豊胸のNGパターンと重なるところもあります。
学会で“推奨しない”とされる以前のことです。ヒアルロン酸豊胸自体元々そこまで頻度の多い施術ではありませんでしたが、「ヒアルロン酸は乳腺下にお団子状に入れた方がよい」と仰る先生もいました。私はそれがどうも受け入れにくく、頑固に細かくチビチビとばらまく注入を行っていました🤔
体内に、大きな半流動性の異物をかたまりで入れるということは、万が一注入時に細菌の混入があったり、リンパ液から細菌が流れてきたりしたときに、その大きな血流不良部位の中で増殖するかもしれません。これはシリコンバッグやプロテーゼのような完全な個体とは考えを別にする必要があります。
細かくチビチビ注入する理由は、ヒアルロン酸が大きなかたまりで存在している状態でなく、細かい注入を行って、そのヒアルロン酸同士の間ですぐに白血球やマクロファージが活躍できるほうが、生体にとって安全性が高いのではないだろーか、というイメージです。ようするに、注入されたヒアルロン酸も時間をかけて順調に吸収されていくほうが、“安全”ということです。
結果として、やはり大きな塊で注入されたヒアルロン酸は被膜に包まれ吸収されずに炎症を強くしたり、感染を起こしたりする例が散見されています。やはり、脂肪注入豊胸のNGパターンと同じですね。
さて、かといって細かく注入すればOKかというと、違うかもしれません。脂肪注入は細かく適切な量を注入すれば生着しますが、ヒアルロン酸は生着するものではありません。たとえ細かく注入しても胸の中でヒアルロン酸がパンパンになってしまえば、塊で注入した場合と同じかもしれません。🙄そんなわけで、もし注入するとしても、片方の胸に100cc未満、理想的には70~80ccまで、というところが限度かと常々感じます。(元々の胸の大きさ、注入スペースの大きさによります)。
また大きなヒアルロン酸のしこり摘出手術の際に、小さなヒアルロン酸のしこりも、同時に摘出されている例もあります。“しこり”とは、被膜につつまれ線維化した状態といえるでしょう。
最近では、ヒアルロン酸の架橋剤についても、より安全性の高いものに注目が集まってきています🙂当院では知名度が高く、けっして安価でないヒアルロン酸製剤を使用してきましたが、それでも注意していかなければなりません。
顔の注入や、最近問い合わせが増えている膣のヒアルロン酸にくらべ、豊胸の場合は量が多くなりますので、それを鑑みましてもヒアルロン酸の豊胸は幕引きかなあと、考える次第です。
ただ非架橋のヒアルロン酸で、胸の表面にハリを持たせるフィラー製剤、ボディ用プロファイロなどは、乳腺下でなく皮下に注入するようにして、安全に使用できるのではないかと考えます。ただ、洋服をきてもわかるようなボリュームアップは難しいかもしれませんし、架橋型に比べると半年や1年など長持ちするものではありません。お胸のお肌にハリをもたせる、お胸のアンチエイジング、というイメージでしょう。(ボディ用プロファイロは、当院ではまだ採用しておりません)

↑CRF脂肪注入豊胸の施術イメージ
そして最後に、もはや言うまでもないことですが、非吸収性のアクアミドや、一部残存しこり形成しやすいと言われるアクアフィリングなどの注入は禁忌の域であります。⚠️乳房がいびつに変形したり、筋膜に沿って腹部にまで落ちてくることもあるようです。ヒアルロン酸と違って、溶解剤もないのでとても大変なことになるのです。
何においてもリスクはつきものですが、長期的に安全かつ良い結果を提供できるように、情報を取捨選択できる感性が必要でございます😐